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訪問介護でのサービス実施記録とは?書き方や様式を紹介
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訪問介護の現場では、介護職が提供するサービスを正確に記録することが不可欠です。「サービス実施記録」は、訪問介護の質を保ち、利用者や家族、事業所、介護保険制度との間で必要な情報を共有するために非常に重要なツールです。
しかし、具体的にどのように書けばよいのか、どんな様式が必要なのかがわからない方も多いのではないでしょうか。本記事では、訪問介護におけるサービス実施記録の意義や書き方のポイント、具体的な様式例、そして最近進んでいる電子化についても詳しく解説します。
初めてサービス実施記録を書く方や、記録の質を向上させたい方にとって、実践的で役立つ内容を提供します。
訪問介護でのサービス実施記録とは?
訪問介護のサービス実施記録は、介護サービスを提供した際にその内容を記録するための書類です。この記録は、介護保険制度に基づき、適切な介護報酬を受け取るためにも必須であり、また利用者やその家族、事業所内での情報共有にも役立ちます。では、このサービス実施記録とは具体的にどのようなものなのかを詳しく見ていきましょう。
訪問介護において、サービス提供者(介護職)が利用者に対して行ったケア内容やその実施状況を正確に記録するのが「サービス実施記録」です。例えば、身体介護や生活援助などのケア内容、サービスを提供した日時、利用者の状態など、細かく記録することが求められます。これは、ただ単に業務を完了した証拠として残すだけでなく、利用者に対する今後のケアの計画にも反映される重要な資料です。
さらに、サービス実施記録は利用者やその家族にとっても、どのようなケアが提供されているのかを知る手がかりとなります。特に、認知症の方や自宅での介護が難しい方の場合、この記録をもとにケアプランが調整され、利用者の生活の質を高めるための情報として活用されます。
サービス実施記録の必要性
次に、サービス実施記録の必要性について掘り下げていきます。この記録は、なぜそれほど重要なのでしょうか?その理由を、以下の5つの視点から解説します。
介護報酬を受けるため
介護保険制度に基づく訪問介護サービスでは、提供されたサービスに対して介護報酬が支払われます。しかし、この報酬を正確に受け取るためには、サービス実施記録が非常に重要です。サービスを提供した証拠として、いつ、どのようなケアを行ったのかを記録することが求められ、これが介護報酬の請求の根拠となります。記録が不完全であったり、誤りがある場合には、報酬が適切に支払われない可能性もあるため、正確かつ詳細に記載することが重要です。
また、介護報酬の算定には厳格なルールがあります。例えば、特定のケアを行った際には、それに応じた報酬が支払われる仕組みとなっており、ケアの内容が詳細に記録されていなければ報酬を正しく受け取ることができません。これが、サービス実施記録が必要とされる最大の理由の一つです。
居宅介護事業所との連携
訪問介護サービスは、居宅介護事業所との密な連携によって成り立っています。このため、サービス実施記録は居宅介護事業所とサービス提供者の間での重要なコミュニケーションツールとなります。記録を通じて、居宅介護事業所側は現場での実際のケア状況を把握し、ケアプランの見直しや調整を行うことが可能になります。
特に、利用者の体調や生活環境に変化が生じた場合、この記録を基に迅速な対応が求められます。例えば、利用者が新たな健康問題を抱えた際には、記録からその兆候を把握し、医師や看護師と連携して早急に対応することが可能になります。
利用者への情報提供
サービス実施記録は、利用者自身やその家族に対して、提供されたケア内容を明確に伝えるためのツールでもあります。特に、訪問介護を受けている利用者は、高齢であったり、認知機能に問題がある場合も多く、サービス提供内容を自分で把握することが難しいことも少なくありません。こうした場合、サービス実施記録を通じて、どのようなケアが行われたのかを家族に伝えることができます。
家族にとっても、この記録は安心材料となります。具体的なケア内容が書かれていることで、どのようにサポートが行われているのかを把握でき、介護に対する不安や疑問を軽減することができるでしょう。
事業所内での情報共有
訪問介護サービスは、複数の介護職員がシフトを組んで行うことが一般的です。このため、サービス実施記録は、シフト間での情報共有をスムーズに行うための重要なツールとなります。例えば、ある職員が行ったケアの内容や、利用者のその時の状態を正確に記録しておくことで、次のシフトに入る職員がその情報を基に適切なケアを提供できるのです。
また、事業所全体での情報共有も、この記録を通じて行われます。サービス実施記録があることで、管理者やケアマネージャーも利用者の状況を把握し、必要に応じてケアプランを見直すことができます。事業所全体のサービスの質を向上させるためにも、記録の正確性と共有の徹底が重要です。
特定事業所加算の算定
特定事業所加算は、訪問介護サービスの質を高めるために設けられた制度です。特に、質の高いサービスを提供し、利用者のケアに対してよりきめ細やかな対応が求められる事業所に対して、加算が認められます。この加算を算定するにはサービス提供に対する指示報告が必要となります。
各利用者ごとにサービス提供責任者からサービス提供の指示を行い、ヘルパーはそれに則ってサービスを提供します。その結果をサービス提供責任者へ報告し次回のサービス内容を細かく検討します。このように、双方の細やかな連携により質の高いサービスを担保できます。
そのためにも、サービス提供内容や利用者の変化など細かく記録する必要があり、サービス実施記録を的確に利用する事で、特定事業所加算の要件を満たすことができます。
サービス実施記録の書き方
次に、サービス実施記録を実際に書く際のポイントについて解説します。記録をつける際には、単に事実を羅列するのではなく、後で読み返した際に分かりやすく、役立つ内容を記載することが大切です。ここでは、具体的な記載例とともに、各項目の書き方を見ていきましょう。
サービス担当者
まず、サービスを提供した担当者の名前を記載します。これにより、誰がサービスを提供したのかが明確になります。特に、複数の介護職員がシフトを組んで対応する場合、担当者を正確に記録することは重要です。記録には、担当者のフルネームを記載するのが一般的であり、これによって後からの確認がスムーズに行えます。
サービス実施日時
サービス実施記録には、いつサービスを提供したのかを明確に記載する必要があります。具体的には、サービスを開始した時間と終了した時間を正確に記録します。例えば、「2024年10月15日 10:00~12:00」といった形で、日付と時間を含めて記載します。サービスの提供時間は介護報酬の算定に影響するため、特に訪問開始時刻と終了時刻は必ず記載してください。利用者の状態や、その日の状況によってサービス提供時間が変わることもあるため、予定通りにサービス提供を行ったのかを含め正確に記録することが求められます。
また、特定のサービスがいつ提供されたのかを後で確認する必要が出てくる場合もあるため、この時間の記録は特に重要です。例えば、利用者の健康状態が悪化した場合、どの時点で何を行ったのかを迅速に確認するために、詳細な記録が必要になります。
事前チェック
訪問介護を行う前には、必ず利用者の状態や生活環境を確認する「事前チェック」を行います。例えば、利用者の体調に変化がないか、家の中の状況が安全かどうかなどを確認します。この事前チェックで問題があった場合は、必ず記録に残しましょう。例えば、利用者の血圧が高かった場合や、家の中でつまずきやすい場所が見つかった場合、その状況を詳しく記録しておくことが重要です。
事前チェックは、利用者の健康状態を把握するだけでなく、安全な介護を提供するための重要なステップです。特に、高齢者や身体的に不自由な利用者に対しては、事前にリスクを把握し、適切な対策を講じるための重要な情報源となります。
身体介護
身体介護の内容を記録する際は、具体的な支援の内容を詳細に書くことが求められます。例えば、入浴の介助、食事の介助、排泄の介助といったケア内容が含まれます。これらの介護行為がどのように行われたのかを正確に記載することが重要です。例えば、「10:30に入浴介助を開始し、利用者が安全に浴槽に入るのを補助。温度確認後、体を洗う作業をサポート」といった形で、具体的な手順や支援の内容を記録します。
身体介護は、利用者の生活の質を直接的に支える重要なサービスです。そのため、どのような介護を行ったのかを具体的に記録することが、後々のケアプランの見直しや次回の介護に活かされる重要な情報となります。また、身体介護においては、介護職員の技術や判断が大きく影響するため、適切な対応が行われたかどうかを記録することも大切です。
生活援助
生活援助に関する記録も、具体的な作業内容を詳細に書き残します。生活援助には、掃除、洗濯、調理、買い物代行などの家事支援が含まれます。例えば、「11:00に掃除を開始し、リビングと寝室の床を掃除機で清掃。11:30に洗濯機を稼働させ、12:00に干す作業を完了」など、どの作業を何時に行ったか、詳細に記録します。
生活援助の記録は、利用者の自立生活を支援するための重要な情報源です。また、どの作業をどの程度行ったのかが明確に記録されていることで、サービス提供の透明性が保たれ、後で確認が必要になった際にも迅速に対応できるようになります。特に、利用者が自宅での生活を送る上で、どのようなサポートが行われているのかを家族や事業所が把握するためにも、生活援助の記録は不可欠です。
その他
訪問介護におけるサービス実施記録には、身体介護や生活援助以外の特記事項も記載します。例えば、利用者とのコミュニケーションや、健康状態に関する気付きなどが該当します。具体的には、「本日、利用者が食欲が少なかったため、医師に相談を推奨」や「利用者の動作に少しふらつきが見られたため、次回の訪問時に再確認」など、サービス実施時に気付いたことや次回の訪問時に考慮すべき点を記録しておきます。
この「その他」の記録は、介護職員間や事業所内での情報共有に非常に役立ちます。特に、利用者の状態が変化している場合や、将来的に特別な対応が必要になる場合には、このような特記事項がケアプランの変更や、早期対応につながります。
サービス実施記録の様式例
サービス実施記録には、事業所や地域によって異なる様式が使用されます。以下に様式の例を紹介します。
実施記録
サービス実施日時 | 年 月 日( ) 時 分 ~ 時 分 | 予定変更 | 有・無 |
サービス種類 | 保険外サービス |
事前チェック記録 | ▢顔色・発汗・体温等 [ ] ▢環境整備 ▢相談援助・情報収集・提供・記録等 |
身体介護
排泄介助 | ▢トイレ介助 ▢Pトイレ介助 ▢尿器介助 ▢パッド交換 ▢おむつ交換 ▢排尿 [ ] ▢排便 [ ] |
食事介助 | ▢全介助 ▢一部介助 ▢水分量 ml ▢食事量 % ▢メニューの説明 ▢特段の調理 |
身なりの保清・整容 | ▢清拭(全身・部分) ▢部分浴(手・足・陰部・臀部) ▢洗髪 ▢全身浴(入浴・シャワー) ▢洗面 ▢整容 ▢口腔ケア ▢爪切り(手・足) ▢更衣介助 |
移乗・移動 | ▢移乗介助 ▢移動・歩行介助 ▢通院・外出介助 ▢外出準備介助 ▢帰宅受入介助 |
起床就寝 | ▢起床介助 ▢就寝介助 ▢体位変換 |
服薬 医療行為 | ▢服薬確認・介助 ▢湿布貼付 ▢軟膏塗布 ▢点眼 ▢痰の吸引 ▢経管栄養 |
自立支援 | ▢入浴・更衣・移動時等の自立への声掛け・安全見守り ▢共に行う (掃除・調理・洗濯・衣類整理・買物) ▢意欲・関心の引き出し |
生活援助
清掃 | ▢居室 ▢寝室 ▢台所 ▢卓上 ▢浴室 ▢トイレ ▢Pトイレ ▢ゴミ出し ▢準備・後片付け |
洗濯 | ▢洗濯 ▢物干し ▢取込収納 ▢アイロンがけ |
寝具の手入れ | ▢シーツ交換 ▢布団干し ▢ベッドメイク |
衣類 | ▢衣類の整理 ▢被服の補修 |
調理 | ▢一般的な調理 ▢配下膳 |
買物等 | ▢日常品等の買い物 ▢薬の受け取り |
その他
預り金 [ 円] – 買い物 [ 円] = おつり [ 円] 内容 |
その他 |
体質確認 | ▢火元 ▢電気 ▢水道 ▢戸締り |
サービス実施記録の電子化
サービス実施記録の電子化は、訪問介護業界でも急速に進んでいます。タブレットやスマートフォンを使って記録を行うことで、手書きによるミスや記録漏れを防ぎ、効率的に情報を管理できるようになります。電子化された記録は、すぐに事業所内で共有できるため、情報伝達のスピードが格段に向上します。
電子化のメリット
記録の正確性向上
手書きの場合、字が読みづらかったり、記入漏れが発生する可能性がありますが、電子化することでこうした問題が解消されます。特に、誤字脱字や、記録漏れを防ぐためのアラート機能がついているシステムも多く、確実に正確な記録が残せます。
時間の短縮
訪問介護では、記録を残す作業が多くの時間を要しますが、電子化によって手早く記録を完了させることができます。サービス提供中に直接タブレットやスマートフォンで記入することができるため、作業の効率化が図れます。
リアルタイムの共有
電子化された記録は、事業所内でリアルタイムに共有することが可能です。これにより、管理者や他の介護職員もすぐに利用者の状況を把握でき、必要に応じて迅速に対応できます。
電子化のデメリット
システム導入のコスト
電子化を進めるためには、専用のシステムやデバイスを導入する必要があり、初期費用がかかる場合があります。また、職員がシステムを使いこなせるようにするための研修が必要となることもあります。
機械の故障やトラブル
電子機器を使用するため、機器の故障やシステムトラブルが発生する可能性があります。これにより、一時的に記録が取れなくなるといったリスクも考えられるため、バックアップ体制を整えておくことが重要です。
電子化におすすめの介護ソフト
サービス実施記録の電子化を行うには介護ソフト「まもる君クラウド」がおすすめです
まもる君クラウドなら、スマートフォンでサービス実施記録を作成できるため、ヘルパーが外出先からすぐに記録を作成することが可能で、データはクラウド上に保管されているため事務所のパソコンからリアルタイムで確認することもできます。
また、ヘルパーの記録だけではなく、サービス提供責任者からの指示も行えるため、特定事業所加算の算定要件にある「指示・報告」をまとめてクリアすることができます。
サービス実施記録の電子化は記録の正確性向上や時間の短縮、リアルタイムの共有が可能な一方で、導入に際してコストが発生したり、ヘルパーが使いこなせないといった注意点もあります。そのため数ある介護ソフトの中でどのソフトが事業所に適しているのかをしっかりと検討する必要があります。
まとめ
訪問介護におけるサービス実施記録は、介護報酬の算定や事業所内外での情報共有、利用者への質の高いサービス提供に欠かせない要素です。記録を適切に行うことで、ケアの質を向上させるだけでなく、事業所の運営効率も高めることができます。
記録の書き方や様式に迷った場合は、まず事業所の方針に従い、利用者やその家族にとって分かりやすい形で記録を残すことを心がけましょう。さらに、電子化を検討することで、記録作業を効率化し、より効果的な情報共有を実現することができます。正確で詳細なサービス実施記録を通じて、利用者に対するケアを一層向上させていきましょう。