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介護コラム
国保連請求(介護報酬請求)の流れや日程などを詳しく解説!
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「介護保険の請求はどのような流れで行えばよいのか」と疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
そもそも「国保連請求(介護保険請求)」とは、サービスを提供した事業者が利用者側から1~3割の支払いを受けたあと、国民健康保険連合会へ請求して残りの7〜9割の給付を受けることを言います。
用語が難しかったり、期日が設けられていたりするため、混乱してしまうケースも少なくありません。そこでこの記事では、介護保険請求がスムーズにできるよう、請求の流れや仕組み、注意点などを解説していきます。ぜひ参考にしてください。
国保連請求とは?
介護保険制度では、サービスを利用した場合、事業者に払う費用(自己負担)は原則1~3割と定められています。サービスを提供した事業者は、利用者側から1~3割の支払いを受け、残りの7〜9割は国民健康保険連合会へ請求して給付を受けます。これを「国保連請求(介護保険請求)」と呼びます。
国保連(国保連合会)は都道府県ごとに47の連合会が設置されており、それぞれの保険者である市町村から委託を受け、介護給付費などの審査や支払いをはじめとした業務を行っています。
国保連請求は、期日が設けられていたり、書類の不備があると給付を受けられなかったりと注意点がいくつかあります。ここでは、請求の流れについて見ていきましょう。
国保連請求の流れ
国保連に請求するためには、利用者に介護保険のサービスを提供する必要があります。手順があるため、順番に解説していきます。
利用者と契約を交わす
まずは、居宅介護支援事業所のケアマネジャーからサービス提供の依頼を受けます。サービス提供事業所は依頼のあった利用者と契約を交わし、介護サービスの提供を開始しましょう。
この際、利用者の自己負担が何割であるか、介護保険の給付制限は受けていないかなど、請求に関わる情報を収集しておくことで、のちの請求業務がスムーズに進みます。
また、介護保険証の確認や、暫定利用かどうかなども併せて確認してください。
サービス提供と実績報告を行う
利用者との契約後、実際にサービス提供を行うためには、居宅介護支援事業所のケアマネジャーから提供の交付を受けます。その予定に沿って、利用者にサービスを行います。
もともと予定していたサービス内容から変更になった場合や、介護保険適応外のサービスを提供した場合は、都度ケアマネジャーへ報告します。また、「サービス提供票」の交付を受けた後は加算についてや、担当者会議などで確認していたサービス提供曜日や頻度などを確認してください。間違いがあったときは、担当ケアマネジャーに確認が必要です。
サービス提供月が終わったら、翌月初めには居宅介護支援事業所へ「実績報告書」を交付し、互いに予定と実績を照らし合わせます。
国保連への請求を行う
サービス事業所が実績を交付し、居宅介護支援事業所と相互に確認を行った後は、国保連へ請求します。
国保連への請求は毎月1日から10日までの間に行う必要があり、期日までに提出しなければ給付が受けられません。国保連へ提出する書類は介護給付費請求書と介護給付費明細書の2つ書類を請求データ化して提出します。
提出方法は、原則インターネットでの伝送、もしくはCD‐Rなどの電子媒体です。請求データ提出後、国保連で審査が行われたのち、請求の翌月の月末に支払われます。
利用者向けの請求書を作成する
国保連への請求だけでなく、利用者の自己負担分の請求も行います。
利用者負担はそれぞれの収入によって異なり、1〜3割負担です。利用者の中には、生活保護を受給しサービス費の自己負担がない方や、給付制限を受けていて本来の負担割合よりも高い自己負担額を支払う必要がある方もいるため、注意してください。
また、介護保険の更新や区分変更申請などの手続きをし、正式な介護度が決定していない場合は、認定結果が出るまで請求できません。介護度が決まるタイミングによっては、月遅れ請求の扱いとなります。
国保連から支払いを受ける
提出した請求内容に問題がなければ、介護報酬の支払いが行われます。支払われる金額は、事前に「介護給付費等支払決定額通知書」が送られてくるため、内容を確認しましょう。
請求内容に不備があった場合は返戻(へんれい)となり、書類の修正や再提出しなければならないときがあります。給付管理票の修正が必要な場合は居宅支援事業所のケアマネジャーとやり取りし、再度請求しましょう。
居宅介護支援事業所の請求スケジュール
国保連への請求は、サービス事業所単独で行うものではなく、居宅介護支援事業所と相互に予定や実績の確認・提出するものです。居宅介護支援事業所側の請求のスケジュールや流れを把握しておくことで、請求に関するやり取りがよりスムーズになるため、確認しましょう。
居宅介護支援事業所
契約を交わした利用者と、日常生活における課題の解決に向けてサービス事業所を選定します。利用者家族が決定したサービス提供事業所と担当者会議を開催し、ケアプランを作成。その後、担当者会議で決定した内容をもとに、利用者には利用票の交付、サービス提供事業所側にはサービス提供票を交付します。
その後、サービス提供事業所から実績報告を受け、請求書類の作成に取り掛かりましょう。
請求に必要な書類が出来上がったら、国保連へ送付して介護保険請求にかかる一連の作業は終了です。
国保連で審査が行われ、請求内容に不備がなければ、居宅介護支援費が支払われます。国保連に請求を提出する期日は、サービス提供事業所と同様に1日から10日です。
国保連請求に関する必要書類
介護保険請求では、一般的に請求書類をデータ化し、国保連に提出します。請求に必要な書類は、居宅介護支援事業所が4種類、サービス提供事業所が2種類と、準備するものが異なります。
それぞれに必要な書類を紹介するので、自分たちの事業所はどの書類を準備するべきか確認しましょう。
居宅介護支援事業所の提出書類
居宅介護支援事業所で国保連に提出する書類は、次の4種類です。
- 介護給付費請求書
- 居宅介護支援介護給付費明細書
- 給付管理票総括票
- 給付管理票
書類ごとに介護サービス単位数の内訳を示していたり、利用者の自己負担分の金額を示していたりと、請求に欠かすことのできない書類です。
国保連では、居宅介護支援事業所で作成する給付管理表と、サービス事業所で作成する介護給付費明細書を突合し、審査を行います。
審査の基準となるのは、居宅介護支援事業所が提出する給付管理表となっており、いくらサービス事業所が正しい請求内容を提出しても、居宅介護支援事業所側が間違った給付管理表を作成してしまうと審査が通らず、サービス事業所に介護給付費が支払われません。計算は正確に行うよう心がけましょう。
居宅サービス事業所の提出書類
居宅サービス事業所で国保連に提出する書類は、以下の2種類です。
- 介護給付費請求書
- 介護給付費明細書
書類ごとに、利用者へサービスを提供した内訳を示していたり、サービス事業所は利用者への自己負担分の請求も必要なためその金額が記載されていたりと、居宅介護支援事業所とは提出書類が異なります。
居宅介護支援事業所の請求と同様に、サービス提供事業所の保険請求も手作業で行うことは業務負担の増加やミスも生じやすいため、介護ソフトの活用が一般的です。
それぞれの提出書類においては、必要な項目や関係書類は厚生労働省から通知が出ています。下記を確認してください。
参考:厚生労働省「介護給付費請求書等の記載要領について」
厚生労働省「(表)介護給付費請求書等の記載要領について関係資料一式」
国保連請求を行う際に注意したいこと
国保連請求では、居宅介護支援事業所とサービス提供事業所の請求内容が合致し、初めて相互に給付費の支払いが受けられます。ここからは請求する上で注意しなければならない点について解説します。
返戻
返戻とは、請求内容に不備があった場合に請求審査が通らず却下されることを指します。返戻されたからといって、それ以降請求審査が通らないということはなく、返戻内容を確認し、修正後に国保連へ再提出することで、支払いが受けられます。
返戻となる理由で多いものとして、給付管理と介護給付費明細書の相違、市区町村の介護認定の相違(正式な介護認定が出る前に請求をかけた場合に多い)、明細書の重複などがあります。
請求審査が通らず返戻となった場合、その月の請求業務に加えて、過去の請求も見直す手間が生じてしまいます。居宅介護支援事業所と細かくやり取りし、可能な限り請求の誤りを減らせるよう努めましょう。
返戻になった場合の対処法
国保連請求で返戻となり却下された場合は、まずは返戻の理由を確認してください。返戻理由は「請求明細書・給付管理票返戻(保留)一覧表」に、利用者ごとに記載されています。
返戻にはそれぞれにエラーコードが設けられていて、その記載されているコードによって、請求のどの部分に不備があったか分かるようになっています。エラーコードの一覧は、各都道府県の国保連ホームページに記載されていることが多く、それぞれ確認しましょう。
下記は青森県と、東京都の国保連のホームページに公開されているエラーコードです。参照してください。
参考:【青森県】「返戻等エラーについて」
【東京都】「チェックエラーコード表(34.4.10次版)」
返戻の中には、給付管理の修正が必要なものであったり、給付管理の提出を依頼する必要があったりと、居宅介護支援事業所との連携が欠かせません。請求に関しての必要な情報は都度共有するように心がけましょう。
また、返戻再請求の期日も通常の請求と同様毎月10日までなので、忘れずに、時間に余裕を持って行ってください。
過誤申立
過誤申立とは、国保連請求で行われた審査の結果「請求不備なし」と判断されて支払いが行われた後、請求内容に不備があったと気づいた際に一度請求を取り下げる手続きです。過誤申立は、各自治体に「過誤申立書」を提出する必要があります。
過誤申立には「通常過誤」と「同月過誤」の2種類の手続きが存在します。
通常過誤の場合、申請書を提出すると、過誤誤決定通知書が届き、給付費の取り下げが行われます。再請求の必要がある場合は、正しい請求内容を国保連に提出することで、給付が受けられます。
同月過誤の場合、過誤申立と正しい請求内容の提出を同じ月に行います。同月に手続きすると、取り下げと再請求の支払いが同時に行われるため、差額調整となり、事業所の金銭的負担は軽減されます。
同月過誤の場合は、自治体との請求スケジュールの調整を忘れずに行いましょう。
請求業務で介護ソフトを活用するメリット
介護請求は、単位数の計算やサービスコードの確認、請求書データの作成など、実際に請求を提出して給付を受けるまで、数多くの作業が発生します。その全てを手作業で行うことは、業務負担の増加や請求ミスなどを引き起こすことになりかねません。
それらの問題を解決するため、介護ソフトを活用して請求業務を行うメリットについて解説します。
業務の効率化を図れる
介護ソフトを活用することで、請求業務の効率化が図れます。サービス事業所からの実績など、必要に応じて手入力が必要な場面もありますが、多くの介護ソフトが利用者の基本情報や介護保険情報、サービス提供票などの帳票管理と連動しているため、請求業務にかかる時間を大幅に削減してくれます。
介護事務を配置していない事業所は、ケアマネジャーや事業所で決めた担当者(主に管理者や相談員・支援員など)が請求業務を行っています。請求業務の時間を削減できることで、結果として他の業務をする時間を確保できたり、利用者と関わる時間が増えケアの質の向上につながったりする可能性があります。
返戻のリスクを軽減できる
介護ソフトは、請求業務の一連の流れの中で不備があると、その内容を通知してくれる機能を備えています。請求を提出する前に間違いに気づくことで、返戻のリスクが軽減するでしょう。
ソフトを活用しない場合、利用者情報の記入や単位数の計算、帳票に実績の転記など、さまざまな請求業務を全て手作業で行うことになり、それだけミスが発生しやすくなり返戻の可能性が高まります。
国保連請求は、居宅介護支援事業所とサービス提供事業所の請求内容を照らし合わせて審査が行われるため、どちらか一方に間違いが生じると、相互に手間や負担がかかってしまいます。
まとめ
本記事では国保連請求の流れ、スケジュールについて解説しました。介護保険請求を正しく行うことは、事業所の安定した運営や利用者との金銭トラブルの防止など、介護保険サービスを提供していく上で重要な要素となります。
解説した内容を踏まえながら、正確かつ効率よく請求業務を行えるよう努めましょう。