Nursing care
column 介護コラム
デイサービス(通所介護)を開業するには?流れや費用、必要な資格を解説!
投稿日:
高齢者の増加によって介護保険サービスが増える中、経験を生かして「デイサービスを開業したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
ここでは、デイサービスを開業するに当たっての流れ、費用、必要な資格について解説します。参考にして、利用者の皆さんに喜ばれるデイサービスの開業に役立ててください。
目次
デイサービス(通所介護)を開業するために必要な資格や条件

デイサービスを開業するために必要な資格はありませんが、開業するに当たっては条件があります。条件を満たすまでに時間を要することもあるので、以下のことを頭に入れながらデイサービスの開業準備を始めましょう。
法人格の取得
介護保険の指定を受けたデイサービスを開業するためには、「法人格」の取得が必要です。
法人には主要な5つがあります。それぞれに良い点と欠点があり、費用や必要書類、準備期間も異なります。以下にまとめたので、法人格の形態はよく考えてください。
株式会社
株式会社の良い点は、認知度が高く、1人でも設立できるところです。
一方で、設立には費用がかかります。株式会社を設立するに当たっては、登録免許税15万円、定款認証費用約5万円が必要です。さらに登録免許税は、資本金の金額によっては15万円以上となります。
合同会社
合同会社の良い点は、株式会社と異なり定款認証が不要で、設立費用の登録免許税が6万円と安く、早く設立が可能なところです。株式会社同様に1人でも設立できます。
一方で欠点は、設立ができるようになったのが平成18年と新しいため、設立会社の数が少なく、知名度が低いことです。
NPO法人
NPO法人は非営利団体で、公益性を重視している法人です。さらに資本金も必要ありません。非課税であることもよいところです。
一方で欠点は、法人設立登記までに知事の許可を得てから6カ月程度かかることと、理事を3人以上、監事を1人以上と、複数人が必要であるところです。
一般社団法人
一般社団法人の良い点は、設立手続きは株式会社と似ており簡単で、登録免許税は6万円と低いところです。最初にかかる費用が抑えられることは、設立のハードルが低く、設立しやすいといえます。
一方で欠点は、認知度が低く、社会的信用が得られにくいところです。
社会福祉法人
社会福祉法人は、社会福祉事業を行うことを目的として、社会福祉法に定めにより設立される法人です。信用度が高く、税金の優遇があります。
欠点は、厳しい監督下に置かれることと、設置基準です。役員要件は、理事6人以上、監事2人以上が必要です。設立までの期間は、事業内容によっては1年以上かかることもあります。
人員基準
デイサービスの人員基準は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の第九十三条・第九十四条で定められており、以下のとおりです。
- 管理者
- 生活相談員
- 看護職員(※)
- 介護職員(※)
- 機能訓練指導員
※:ただし、デイサービス定員が10人以下の地域密着型事業所の場合は、看護職員または介護職員のいずれか1人の配置が可能です。
デイサービスの利用者数によって、それぞれの職種の必要最低人数が決まります。人員基準は、デイサービスを運営する上で最低限定められた人数です。職員が体調不良などにより仕事を休んだことで人員基準が満たせない人員では、安心したサービスを提供することはできません。職員の急な欠勤にも対応できる余裕を持った人員配置が円滑にサービス提供していく上では必要でしょう。
参考:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
設備基準
設備基準も人員基準と同様に、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」に以下のように定められています。
第九十五条 指定通所介護事業所は、食堂、機能訓練室、静養室、相談室及び事務室を有するほか、消火設備その他の非常災害に際して必要な設備並びに指定通所介護の提供に必要なその他の設備及び備品等を備えなければならない。
引用:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
2 前項に掲げる設備の基準は、次のとおりとする。
一 食堂及び機能訓練室
イ 食堂及び機能訓練室は、それぞれ必要な広さを有するものとし、その合計した面積は、三平方メートルに当該指定通所介護事業所の利用定員(当該指定通所介護事業所において同時に指定通所介護の提供を受けることができる利用者の数の上限をいう。次節において同じ。)を乗じて得た面積以上とすること。
ロ イにかかわらず、食堂及び機能訓練室は、食事の提供の際にはその提供に支障がない広さを確保でき、かつ、機能訓練を行う際にはその実施に支障がない広さを確保できる場合にあっては、同一の場所とすることができる。
二 相談室 遮へい物の設置等により相談の内容が漏えいしないよう配慮されていること。
加えて、デイサービス事業所とその他の介護保険事業所などが併設している場合、利用者へのサービス提供に支障がないときは、基準上両方のサービスに規定があるものおよび、規定はないが設置されるものは共用できます。
例えば、指定介護老人福祉施設と併設している場合に、入浴設備などが共用されているケースがあります。介護福祉施設では重度の方も対応しているため、特殊浴槽が一般的に導入されていることが少なくありません。デイサービス事業所単体で導入するには高額な費用がかかる設備が併設として共用できると、利用者への幅広い対応が可能となります。
運営基準
人員基準、設備基準と同様に、運営基準の中の運営規定は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」に、以下のように定められています。
第百条 指定通所介護事業者は、指定通所介護事業所ごとに、次に掲げる事業の運営についての重要事項に関する規程(以下この章(第五節を除く。)において「運営規程」という。)を定めておかなければならない。
引用:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」
一 事業の目的及び運営の方針
二 従業者の職種、員数及び職務の内容
三 営業日及び営業時間
四 指定通所介護の利用定員
五 指定通所介護の内容及び利用料その他の費用の額
六 通常の事業の実施地域
七 サービス利用に当たっての留意事項
八 緊急時等における対応方法
九 非常災害対策
十 虐待の防止のための措置に関する事項
十一 その他運営に関する重要事項
デイサービスの運営に当たっては、その他にも以下のことが定められています。
- 通所介護計画の作成
- 勤務体制の確保
- 定員の順守
- 非常災害対策
- 衛生管理など
- 地域との連携
- 事故発生時の対応
- 記録の整備
運営基準は事業所が適切な介護サービスを提供するために、サービス内容や提供方法、必要な書類などを指導監査で定期的に確認しています。規定にある取り組みができていない場合は、返還や事業取り消しになる可能性があるでしょう。運営基準を正しく守っていくことが求められます。
デイサービスを開業する流れや手順

ここでは、実際にデイサービスを開業する際に必要なことや、手順について説明していきます。時間を要するものもあるので、確認しながら行ってください。
コンセプトやサービス内容を決める
デイサービスのコンセプトやサービス内容は、最初に決めましょう。現在介護保険では、デイサービスはサービス内容によって、配置する職員や単位数が異なります。
例えば、認知症対応型デイサービスや地域密着型デイサービスなどは、配置職員や定員、サービス内容が決められている分、通常のデイサービスに比べて基本の単価が高く、加算が付くなど経営が安定できる要素があります。コンセプトやサービス内容によって届出に必要な書類も異なるため、開業前にしっかり決めておいてください。
必要書類を用意する
デイサービスの開業に必要な書類の例は、以下の通りです。
- 事業申請書類
- 事業継続計画(BCP)
- 申請者の定款、寄付行為などの写しおよび登記簿謄本
- 従業者の勤務体制および勤務形態一覧表
- 事業所平面図
- 設備、備品などの一覧表
- 運営規程
- 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
- 誓約書
- 事業に係る資産の状況を記載した書類
事業所指定は都道府県が行うため、都道府県によっては必要書類が異なることがあるので、届出の際は確認しましょう。
法人設立を行う
介護保険上の事業所指定を受けるためには、法人格が必要となります。法人格を持っている事業者が申請する場合は問題ありませんが、法人格を持っていない場合は、法人を設立しなくてはなりません。
法人格には、高額な費用がかかる会社、法人設立までに時間がかかる会社、多くの書類を提出して法人格を得る場合など、さまざまな種類があります。デイサービスを開業するには法人格が必須であることを覚えておいてください。
自治体と事前協議する
デイサービスを立ち上げる際、介護保険上の指定は都道府県が行います。都市部では、事業所が競争しているところもあります。
一方、郡部ではサービスが不足し、利用者が事業所を選ぶことができない場合も出てきています。デイサービスを始めるに当たっては、自治体へ相談し、今、この自治体で何が必要か、何が求められているのか、コンセプトやサービス内容が自治体の求めているものなのかなどを自治体と事前協議をすることが大切です。
同じことを実施している事業所が周りに多いと、利用者の取り合いになることも考えられます。自治体との事前協議はしっかり行いましょう。
物件を契約して基準を満たす内装工事を行う
サービスを提供できる物件を探します。物件を探す際、用途地域の条件に合っているかを必ず確認してください。土地は都市計画法に基づき、地域における利用方法が決まっています。良い物件が見つかってもデイサービスの運営が困難な地域であれば、開業することはできません。
また、開業する予定のデイサービスの規模によって、必要な設備の基準があります。利用者の定員に対して必要な平方メートル数や、消防法に基づいた必要な設備が設置できるかなども確認が必要です。
その他、立地条件もよく考えなくてはなりません。たとえ静かで広い土地があっても、住宅地から遠く離れていると利用者の確保が難しい可能性も考えられます。送迎の範囲、周囲の高齢者人口や高齢者がいる世帯がどれくらい住んでいるのかなどを調査しましょう。
備品など必要なものを購入する
デイサービスで必要な備品は、全て用意する必要があります。例えば食事に関することであれば、テーブルやイスを最低でも1日の利用定員分、用意しなくてはなりません。
その他、送迎用の車両、入浴設備、排せつ時に必要な物品、機能訓練に必要な道具など、小さい備品から大きな備品までそろえます。基本的には購入しますが、大きな備品は経済状況に応じてリースで対応する場合もあります。
自治体へ指定申請を行う
全ての準備が整ったら、自治体へ「指定申請」を行います。介護保険でのサービスを提供する場合、自治体からの指定を受けることは必須です。自治体とは申請前に協議しているので、協議内容を踏まえて対応しましょう。
デイサービスの開業にかかる費用

デイサービス開業には、事務費や備品なども加味すると数百万円以上の費用がかかると推測されます。
事務費の場合、すでに法人格を取得している事業所であれば法人格を取得する費用がかかりませんが、法人格の取得から始めると法人格の取得費用も発生します。株式会社なら20万円から25万円に加えて、資本金が必要です。
続いて、建物をデイサービス開業へ使いやすいようにした場合は、改修費や必要な備品代、送迎車両なども用意しなくてはなりません。
また、従業員の人件費やデイサービス事業の運転資金も必要です。介護保険の場合、利用料は月末締めの翌月10日までに介護保険へ請求します。その支払い決定が下りるのは翌月なので、数カ月分の運転資金は事前に用意しておかなければ支払いが困難となります。
初月からデイサービスが満床で運転ができるとは限りません。軌道に乗るまでは利用者が定員に満たないことも想定されるため、資金を確保しておくとよいでしょう。
総額の費用については、開業予定のデイサービスの規模によっても異なる点はありますが、開業前の費用の他、1カ月当たりの費用を計算し、安定して運営ができる運転資金を考えて準備してください。
デイサービスの開業時の資金調達方法

デイサービス開業時の資金調達方法には、以下の方法があります。
自己資金
デイサービス開業の準備費用から軌道に乗るまでの運転資金を全て自己資金で対応できるなら、どこかで借りる必要がなく安心ですが、保証はありません。
また資産を全て開業に費やせば、生活を圧迫する、資金がなくなった際にトラブルが起きる恐れがあり、危険です。自己資金でどの程度対応ができるのかは、事前に確認しておきましょう。
金融機関から融資を受ける
デイサービス開業に限らず、事業を始める際の資金の準備として、金融機関から融資を受けることは多いでしょう。ただし、金融機関はどんな事業所でも融資してくれるわけではありません。安定的な運営ができる事業計画、資産状況、経営者の経歴などを金融機関へ説明し、融資先として認められる必要があります。
助成金や補助金を利用する
デイサービス事業の開業に関しては、国や自治体で行われている助成金や補助金が利用できます。ただし、助成金や補助金は年度ごとで内容が変更になることがあります。また申し込みの期日が決まっている、補助金を利用したい年度に申請する必要があるなど、利用までに時間がかかることも少なくありません。
返済不要なものが多いため、リスクは低いです。しかし助成金や補助金は収益とみなされるので、法人格によっては所得税や法人税がかかることに留意しましょう。
デイサービス立ち上げ・開業はもうかるの?
デイサービスの立ち上げ・開業がもうかるのかどうかは、運営の仕方によって左右されます。要介護者は年々増えており、介護保険サービスの需要が多いのは事実です。
一方で高齢者がどの地域でも増えており、どこでもサービスが不足しているかというわけではありません。デイサービスを立ち上げる際には市場調査を行い、立ち上げようとしている地域の高齢者人口はどうなのか、その地域で他にデイサービスを運営している事業者はいるのかなどを調べてください。
同じ地域にデイサービスがいくつもあれば、サービス過多になる恐れがあります。その際は、選ばれるデイサービスになるための努力も必要です。
デイサービス開業で失敗しないためのポイント
デイサービス開業で失敗しないためのポイントは、3つあります。
第1は、他のデイサービスとの差別化を図ることです。自分たちのデイサービスの強みや特徴をアピールします。
第2は、働きたいと思ってもらえる職場づくりです。「利用したい」と感じてもらえるデイサービスを目指すことは大切ですが、そこで働く従業員が定着できなければ成功は難しいでしょう。そのために、働く従業員の成長を促進し、仕事へのモチベーションを高めることは大切です。また、人材育成の環境を整えることで、未経験や経験が浅い人でも安心して働ける職場となります。
第3は、稼働率など経営指標を考えることです。目の前のことだけでなく、経営指標の目標と実績を見える形にしておくことは安定した経営につながります。例えば、同じ運営をしていても稼働率が低下した場合、何が原因かを探ることができるでしょう。
まとめ

デイサービス開業は、開業までに多くの準備が必要です。準備によっては時間がかかったり、多額の費用が発生したりすることがあります。
また、介護保険の指定を受けるには、どのようなデイサービスを運営したいのか、コンセプトや特徴を踏まえて事業計画が必要です。開業準備と並行して、事業運営についても早い段階で決めておきましょう。