Nursing care
column 介護コラム
ADL維持等加算とは?算定要件やスケジュールなどを分かりやすく紹介!
投稿日:
「ADL維持等加算」とは、要介護1〜5の認定を受けた方を対象とした加算です。1年間のADL(食事や入浴、排せつ、着替えなどの日常生活動作)を評価した結果で、算定の可否が決定されます。ここではADL維持等加算の詳細やメリットについて、解説していきます。
目次
ADL維持等加算とは?

ADL維持等加算は、2018年の介護報酬改定で新たに創設された加算です。各介護施設・介護事業所の「介護サービスの質を示すための評価加算」でもあります。
ADL(Activities of Daily Living)とは、食事・入浴・排せつ・着替えなどの日常生活動作のことをいいます。ADL維持等加算は、利用者のADL(日常生活動作)の維持や改善の必要性が一定水準を超えている場合に、取得が可能です。
参考:「令和6年度介護報酬改定の概要」
参考:「令和6年度介護報酬改定を踏まえた科学的介護情報システム(LIFE)の対応について」
ADL維持等加算のメリット

ADL維持等加算を取得することで、各介護施設・介護事業所と利用者の日常生活に、どのようなメリットをもたらすのでしょうか。ADL維持等加算を取得する利点を2つ紹介します。
介護サービスの質を示せる
ADL維持等加算を取得することで、利用者や家族の方にはもちろん、ケアマネジャーにも介護サービスの質の高さを証明できます。
利用者のADL(日常生活動作)が維持・向上できることで、認知症の症状を遅らせたり、要介護度の進行を抑えたりすることが可能です。「できることはご自身でしてもらう」という自立支援への取り組みも示すことができるでしょう。
科学的介護推進体制加算と併用すると効率的に算定できる
これからADL維持等加算の取得を検討している介護施設・介護事業所は、「科学的介護推進体制加算」と併用することをおすすめします。
科学的介護推進体制加算とは、2021年に新設された加算です。3カ月ごとに利用者のADL評価を行い、LIFE(科学的介護情報システム)へデータを提出します。フィードバックが得られるため、より質の高い介護サービスの提供につながるでしょう。
ADL維持等加算と科学的介護推進体制加算とは、重複する項目がいくつかあるため、併用しても効率的に算定することが可能です。
参考:厚生労働省「科学的介護情報システム(LIFE)について」
ADL維持等加算の対象となるサービスや事業

ADL維持等加算の対象となる介護サービスや介護事業所は、以下の通りです。
通所系サービス
- 通所介護
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
施設系サービス
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
2021年度に行われた介護報酬改定で、ADL維持等加算の対象となる介護サービスとして「認知症対応型通所介護」「介護付きホーム」「特養」が追加されています。
ADL維持等加算の算定要件・単位数

ADL維持等加算の単位数は、2021年度の介護報酬改定によって、以下のように約10倍に引き上げられました。
- ADL維持等加算(Ⅰ):3単位 → 30単位
- ADL維持等加算(Ⅱ):6単位 → 60単位
他にも、「サービス提供時間が短時間の介護事業所も対象になる」という、算定要件の緩和も行われています。実際の算定要件や単位数について、詳しく見ていきましょう。
ADL維持等加算(Ⅰ) | ADL維持等加算(Ⅱ) | |
---|---|---|
単位数 | 一月:30単位 | 一月:60単位 |
対象者 |
| |
算定条件 |
| |
ADL利得 |
|
ADL維持等加算(Ⅰ)の算定要件
ADL維持等加算には、(Ⅰ)と(Ⅱ)の2つがあります。ここからは、ADL維持等加算(Ⅰ)の算定要件について詳しく解説します。
ADL維持等加算(Ⅰ)の算定要件は、利用者のADL(日常生活動作)が一定期間、現状のまま維持できた場合に、事業所が受けられる加算です。また、「短期間で一気に認知症が進んでしまった」「転倒による骨折で、歩行が困難になった」などの事例は対象外となります。
ADL維持等加算(Ⅱ)の算定要件
先述したADL維持等加算(Ⅰ)に続いて、ここからはADL維持等加算(Ⅱ)の算定要件について詳しく解説します。
ADL維持等加算(Ⅱ)の算定要件は、利用者のADL(日常生活動作)が以前よりも改善した場合に、事業所が受けられる加算です。例えば、「これまで車椅子を使用していたが、歩行器を使用して歩けるようになった」など、利用者のADLが以前よりも改善された場合に適用されます。以前と変わらない(現状維持)もしくは、以前よりも悪化してしまったという場合は対象外です。
ADL維持等加算の算定スケジュール

ADL維持等加算には、算定スケジュールというものがあります。算定スケジュールとは、以下の一連の流れのことです。
- 「Barthel Index(バーセルインデックス)」と呼ばれる利用者のALD評価を基に、「BI(Barthel Indexの略)研修」を受けた者が適切な評価を行う
- LIFEへのデータ提出の期限までに評価を完了させる
- LIFEへのデータを提出する
LIFEへのデータ提出の期限は、既存の利用者の場合は算定を始める月の翌月10日までです。新規の利用者の場合は、サービスを利用した月の翌月10日までと決められています。
Barthel Indexとは?
利用者のADL評価を行うための指標として用いられている「Barthel Index」では、利用者のADL(日常生活動作)を以下の10項目に分けています。
- 食事
- 車椅子とベッド間の移乗動作
- 整髪・整容
- トイレでの排せつ動作
- 入浴
- 移動動作
- 階段昇降
- 更衣
- 排便自制
- 排尿自制
この10項目に沿って、点数化するという簡単な評価スケールのため、忙しい介護現場でも短時間で利用者の評価が可能です。
Barthel IndexでのADL評価方法
「Barthel Index」のADL評価は、どのような方法で進めていくのでしょうか。ここからは、実際にBarthel Index(バールインデックス)を用いた評価の一例を紹介します。
点数 | 質問内容 | 得点 | |
---|---|---|---|
①食事 | 10 | 自立・自助具などの装着可・標準的時間内に食べ終える | 10点 |
5 | 部分介助(例えば、おかずを切って細かくしてもらうなど) | ||
0 | 全介助 | ||
②車椅子とベッド間の移乗 | 15 | 自立・ブレーキフットレストの操作も含む(非行自立も含む) | 15点 |
10 | 軽度の部分介助または監視を要する | ||
5 | 座ることは可能であるがほぼ全介助 | ||
0 | 全介助または不可能 | ||
③整髪・整容 | 5 | 自立(洗面・洗髪・歯磨き・ひげそり) | 5点 |
0 | 部分介助または不可能 | ||
④トイレ動作 | 10 | 自立(衣服の着脱・後始末を含むポータブル便器などを使用している場合はその洗浄も含む) | 10点 |
5 | 部分介助・体を支える・衣服の着脱・後始末に介助を要する | ||
0 | 全介助または不可能 | ||
⑤入浴 | 5 | 自立 | 5点 |
0 | 部分介助または不可能 | ||
⑥歩行 | 15 | 45m以上の歩行、補装具(車椅子・歩行器は除く)の私用の有無は問わず | 15点 |
10 | 45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む | ||
5 | 歩行不能の場合、車椅子で45m以上の操作可能 | ||
0 | 上記以外 | ||
⑦階段昇降 | 10 | 自立、手すりなどの使用の有無は問わない | 10点 |
5 | 介助または監視を要する | ||
0 | 不能 | ||
⑧着替え | 10 | 自立、靴・ファスナー・装具の着脱を含む | 10点 |
5 | 部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える | ||
0 | 上記以外 | ||
⑨排便コントロール | 10 | 失禁なし、浣腸(かんちょう)、座薬の取り扱いも可能 | 10点 |
5 | 時に失禁あり、浣腸、座薬の取り扱いに介助を要する者も含む | ||
0 | 上記以外 | ||
④排尿コントロール | 10 | 失禁なし、収尿器の取り扱いも可能 | 10点 |
5 | 時に失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む | ||
0 | 上記以外 |
「Barthel Index」での評価基準は、以下の通りです。
- 「85点以上」の得点がある利用者は自立している
- 「60点以上」の得点がある利用者は一部自立している
- 「40点以下」の得点がある利用者は大部分の介助を必要としている
- 「0点」の利用者は、全介助を必要としている
リハビリや機能訓練を行い、できたことを「15点」「10点」「5点」「0点」の4段階で評価を行います。それに合わせて、利用者様お一人おひとりの自立度が判断されるのです。
ADL評価を行う職員について
先ほど紹介したADLの評価方法ですが、介護職員であれば誰でもできるというわけではありません。「ADL維持等加算」「科学的介護推進体制加算」「個別機能訓練加算」の3つのADLに関わる評価を行うには、以下の研修を受講する必要があります。
- 厚生労働省が作成したマニュアルや動画を用いて学習する
- 外部もしくは内部の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士から指導を受ける研修に定期的に参加する
ADLの評価については、2021年度介護報酬改定で「一定の研修を受けた者がBarthel Indexを用いた評価を行う」と厚生労働省が示しました。
ADL利得の計算方法
ADL利得の計算方法は、以下の通りです。
- 利用者ごとに「7カ月目のBI合計値」から「初月のBI値」を差し引く
- 利用者ごとに、初月のADL値がどこに当てはまるかを確認する
- 「調整係数(0~3)」を加えることで、利用者ごとのADL利得が算出される
ADL利得の計算方法を簡単に表すと、「7カ月目のBI合計値-初月のBI合計値+調整係数」という計算方法です。このADL利得計算は、LIFEへデータを提出することで、自動で計算が行われます。
LIFEへのADL維持等加算データの提出方法

ADL維持等加算のデータは、LIFEへの提出が必要です。ここからは、LIFEへのデータ提出方法について詳しく解説していきます。
データ提出の対象者
まず、ADL維持等加算のデータ提出の対象者となるのは、「要介護1〜5」の介護認定を受けた利用者です。
利用者一人ひとりのADL値を集計し、「ADLが維持できている」もしくは「ADLが改善している」という結果を得ることが必要です。その場合、評価期間終了後の1年間、全ての要介護利用者に対して、算定加算を続けることができます。
ADL維持等加算算定に向けたデータ提出方法
LIFEへのデータ提出は、どのような手順で行うのでしょうか。LIFEへのデータ提出は簡単で、3つのステップで操作できます。LIFEでの操作手順は以下の通りです。
ステップ1 | 事業所で利用する様式の表示設定を行う |
ステップ2 | 記録した様式情報を、管理ユーザーまたは操作職員がLIFEに登録 介護ソフトウェアの情報をCSVファイルを介して取り込むか、またはLIFEの画面から入力することで登録可能 |
ステップ3 | [取込後のステータスを「確定済」にする]にチェックを付ける |
参考:操作説明書 (様式情報入力編)
操作説明書 (ADL維持等加算算定編)
提出頻度
基本的に、利用者がADL維持等加算の利用を開始した月から6カ月後にデータを提出します。なお、以下のケースでは6カ月以内でも提出しなければなりません。
- ADL維持等加算の利用を終了した方の場合、サービスを利用した最終の月
- 6カ月以内に要介護から要支援になった方は、要介護としてサービス利用をした最終の月
基本的に、6カ月以内にデータを提出するのは「ADL維持等加算の利用を終了した利用者がいる場合」です。しかし、2024度の介護報酬改定により「利用者のADL値」に加え、「要介護度」「障がい高齢者および認知症高齢者の日常生活自立度」「評価日」「対象期間(初月対象または6月対象)」を追加して提出するよう、変更となりました。
ADL維持等加算を取得するためには?

ADL維持等加算は、どのような介護施設・介護事業所でも取得できるわけではありません。利用者のADLを維持させたり、向上させたりするために取り組むことが取得条件の1つです。
運動プログラムを行う
体操やストレッチ、筋トレ、散歩を兼ねたウォーキングなど、利用者の筋力・運動能力を低下させない「運動プログラム」を実施する必要があります。普段、車椅子に座っている時間が長い利用者においては、介護職やリハビリ職が支えながら歩く練習をすることも大切な運動プログラムです。
生活行為の目標を立ててもらう
利用者のADLを向上させるには、介護職側の努力だけでは成り立ちません。「これからどう過ごしていきたいか」「近い将来、どうなりたいか」などの目標を利用者に立ててもらうことが大切です。
もし、利用者ご本人に目標を立ててもらうことが難しい場合は、家族の方に協力してもらいましょう。例えば、「自分の足で歩けるようになりたい」「夜間でも、1人でトイレに行けるようになりたい」など、簡単な目標設定から始めてみるのがおすすめです。
生きがいや役割を持ってもらう
地域のボランティア活動に参加したり、複数人で行う趣味・レクリエーションに参加したりと、利用者の社会性を保つことで、生きがいづくりになります。また、簡単な調理をお願いするなど役割を持ってもらうと、利用者の自己肯定感が高まります。
介護施設・介護事業所で積極的に地域住民との関わりが持てるイベントを開催するのもいいでしょう。
まとめ

ADL維持等加算は、介護報酬に加算される費用です。介護職の給与に反映することで、さらに質の高い介護サービスを提供しようというモチベーションアップにつながります。
ADL維持等加算の算定要件や対象者、手順などを理解し、是非各介護施設・介護事業所の介護報酬改善に役立ててください。