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【2024年改定対応】処遇改善加算の算定要件や計算方法を解説

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本記事では、処遇改善加算の算定要件や単位数、必要書類など算定に必要な情報を厚生労働省の情報を中心にまとめています。

また2024年に行われた介護報酬改定の内容も合わせて解説しています。ぜひ処遇改善加算算定の参考にして下さい。

処遇改善加算とは?

処遇改善加算とは、介護事業所で働く介護職員などの賃金向上や、職場環境の改善などを目的とした加算です。

介護事業所は加算を算定するために、賃金の向上や職場環境の見直しなどを行う必要があり、介護業界で課題となっている人材不足を解消する狙いもあります。

令和6年(2024年)介護報酬改定での処遇改善加算の変更点

これまでの処遇改善で、介護職員において一定の賃金改善は行われましたが、いまだに全産業平均賃金との格差は大きく介護人材の不足は、変わらず大きな問題となっています。

また、これまでの処遇改善加算は「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3区分に分かれており、それぞれの処遇改善加算で算定要件や加算率が異なっていたため、制度の把握や申請書類の煩雑さ、利用者の理解が難しいなどといった問題点もありました。

これまでの処遇改善加算の問題点
・他産業と比較した介護業界の賃金の低さ
・複雑な制度と書類

これらの観点から令和6年度の介護報酬改定では処遇改善加算の見直しが行われました。こちらで具体的な変更点をまとめています。

処遇改善加算の一本化

元々、介護職員の処遇改善を目的とした加算は「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つに分かれていましたが、事務負担軽減などの理由からそれぞれの加算率を組み合わせる形で「処遇改善加算」に一本化されました。厚労省は以下の観点から処遇改善加算の一本化を行うと説明しています。

・事業者の賃金改善や申請に係る事務負担を軽減する観点
・利用者にとってわかりやすい制度とし、利用者負担に解を得やすくする観点
・事業所全体として、柔軟な事業運営を可能とする観点

参考:厚生労働省|介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

今まで加算ごとにあった算定要件や申請書類も一本化されるため、介護事業所側は加算算定のための事務負担が軽減され、より多くの介護事業所での処遇改善が期待されています。

令和3年(2024年)からの処遇改善加算の加算率引き上げ

令和6年度の介護報酬改定により、介護職員のベースアップを目的とした算定率の引き上げが行われました。引き上げ率は介護サービスによって異なりますが、一番大きな訪問介護では2.1%引き上げられ、処遇改善加算(Ⅰ)の場合トータルで24.5%の加算率となります。

これにより、介護事業所は介護職員に対して令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のベースアップを行うことが求められます。

激変緩和措置として処遇改善加算Ⅴの設置

処遇改善加算の一本化は令和6年度4月に行われましたが、直ちに移行できない事業所のために、激変緩和措置として処遇改善加算Ⅴを設置されています。

処遇改善加算Ⅴは、令和6年5月末時点で、処遇改善加算、特定事業所加算、ベースアップ等支援加算のうち、いずれかの加算を算定している事業所であれば、処遇改善加算Ⅴとして算定が可能です。

しかし、処遇改善加算Ⅴは移行への激変緩和措置を目的としているため、令和7年3月までに限り算定ができ、それ以降は処遇改善加算Ⅰ~Ⅳいずれかへの移行が必要となります。

処遇改善加算の単位数

各サービスごとの処遇改善加算の単位数は以下の通りです。

サービス区分処遇改善加算
訪問介護夜間対応型訪問介護定期巡回・随時対応型訪問介護看護24.522.4%18.2%14.5%
(介護予防)訪問入浴介護10.0%9.4%7.9%6.3%
通所介護地域密着型通所介護9.2%9.0%8.0%6.4%
(介護予防)通所リハビリテーション8.6%8.3%6.6%5.3%
(介護予防)特定施設入居者生活介護地域密着型特定施設入居者生活介護12.8%12.2%11.2%8.8%
(介護予防)認知症対応型通所介護18.1%17.4%15.0%12.2%
介護福祉施設サービス地域密着型介護老人福祉施設
(介護予防)短期入所生活介護
14.9%14.6%13.4%10.6%
介護保険施設サービス
(介護予防)短期入所療養介護(老健)
7.5%7.1%5.4%4.4%
(介護予防)短期入所療養介護
(病院等(老健以外))介護医療院サービス
(介護予防)短期入所療養介護(医療院)
5.1%4.7%3.5%2.9%

また、令和7年3月までは激変緩和措置として処遇改善加算Ⅴ(1)~(14)が設けられており、令和6年5月末時点で算定をしてる3加算に加え、引き上げ分の2.1%を加えた加算率で算定ができます。

ただし令和7年4月からは処遇改善加算Ⅰ~Ⅳのいずれかへの移行が必要となります。

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処遇改善加算の対象サービス

処遇改善加算の算定対象は以下の介護サービスです。それ以外の介護サービスにいては処遇改善加算を算定することは出来ません。

  • 訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 通所介護
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所生活介護
  • 短期入所療養介護
  • 特定施設入居者生活介護
  • 介護老人福祉施設
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 夜間対応型訪問介護
  • 地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 認知症対応型共同生活介護
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 看護小規模多機能型居宅介護

処遇改善加算の算定要件

処遇改善加算の算定要件は「キャリアパス要件」「月額賃金改善要件」「職場環境等要件」の3つに分かれており、処遇改善加算の区分によって、どの要件を満たす必要があるのかが変わってきます。

こちらでは処遇改善加算の区分ごとの算定要件と、各要件を解説しています。

算定要件加算区分
キャリアパス要件キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・資金体系)
キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)
キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)
キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額)
キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)
月額賃金改善要件月額賃金改善要件Ⅰ
月額賃金改善要件Ⅱ
職場環境等要件・6の区分ごとにそれぞれ2つ以上(生産性向上は3つ以上、うち一部は必須)取り組む。 
・情報公表システム等で実施した取組の内容について具体的に公表する。
6の区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)取り組む。

キャリアパス要件

処遇改善加算のキャリアパス要件は、介護職員のキャリアアップを支援する制度です。要件には、賃金体系の整備、研修計画の作成、昇給制度の導入などが含まれます。これらの要件を満たすことで、介護職員の定着率向上やサービスの質向上につながります。

キャリアパス要件はⅠ~Ⅴに分類されており、算定する処遇改善加算によってどの要件を満たす必要があるのかが異なってきます。


キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・資金体系)

キャリアパス要件Ⅰでは、任用要件と資金体系の整備が求められ、全ての処遇改善加算の区分で満たす必要があります。介護職員の、職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件を定め、それらに応じた賃金体系を書面で整備し、全ての介護職員に周知します。

  1. 介護職員の任用の際における職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。
  2. 1に掲げる職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の 臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。
  3. 1及び2の内容について就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。
  4. ただし、常時雇用する者の数が10人未満の事業所等など、労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所等においては、就業規則の代わりに内規等の整備・周知により要件を満たしたとしても差し支えない

引用:厚労省|介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について
参考:厚労省|一本化リーフレット

各用語の意味については以下の通りです、

  • 職位
    主任、班長、一般など、介護職員として2段階以上の職位を定める必要があります。また、指定基準で示されている職種(管理者、サービス提供責任者、生活指導員。計画作成担当者など)のみを職位として定めでは、要件を満たすことができません。職位の呼称については法人で独自に定めたもので差し支えないとされています。
  • 職責、職務内容
    職位ごとの業務内容を定めます。
  • 任用要件
    職位ごとに求められる能力や資格などを定め、その職位になるために何が必要かを明確にします。
  • 賃金体系
    職位に応じた給与体系や、役職手当などの賃金を定めます。

参考:NAGOYAかいごネット|介護職員処遇改善加算にかかる キャリアパス要件の審査基準について 

例えば、主任という職位の場合、以下のように整理できます。

  • 職責
    介護職員の指導・育成、業務の調整、サービスの質向上の推進
  • 職務内容
    シフト管理、業務分担の最適化、利用者のケアプラン実施支援、家族対応、現場のトラブル対応
  • 任用要件
    介護福祉士などの資格取得、一定の実務経験(例:3年以上)、リーダーシップ能力の評価
  • 賃金体系
    基本給の昇給、役職手当の支給、処遇改善加算の対象拡大など

キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施)

キャリアパス要件Ⅱでは、介護職員の資質向上の目標や、具体的な計画の策定。研修の実施または研修機会の確保が求められます。キャリアパス要件Ⅰと同様に全ての処遇改善加算の区分で必要となる要件です。

  1. 介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及びa又はbに掲げる事項に関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。
    1. 資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等(OJT、OFF-JT 等)を実施するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。
    2. 資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。
  2. 1について、全ての介護職員に周知していること。

キャリアパス要件Ⅱ(昇給の仕組み)

キャリアパス要件Ⅲでは、介護職員について以下の昇給の仕組みを整備する必要があり、処遇改善加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲで必要となる要件です。

  1. 介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次のaからcまでのいずれかに該当する仕組みであること。
    1. 経験に応じて昇給する仕組み
      「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること。
    2. 資格等に応じて昇給する仕組み
      介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況に応じて昇給する仕組みであること。ただし、別法人等で介護福祉士資格を取得した上で当該事業者や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。
    3. 一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
      「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。
  2. 1の内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

ただし、常時雇用する者の数が 10 人未満の事業所等など、労働法規上の就業規則の作成義務がない事業所等においては、就業規則の代わりに内規等の整備・周知により上記二の要件を満たすこととしても差し支えない。また、令和6年度に限り、処遇改善計画書において令和7年3月末までに上記一の仕組みの整備を行うことを誓約すれば、令和6年度当初からキャリアパス要件Ⅲを満たすものとして取り扱っても差し支えない。ただし、必ず令和7年3月末までに当該仕組みの整備を行い、実績報告書においてその旨を報告すること。

引用:厚労省|介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について
参考:厚労省|一本化リーフレット

つまり、介護職員の昇給制度について、経験や資格に基づく昇給の仕組みを設けることが求められています。例えば、介護福祉士資格を取得した場合や実務者研修を修了した場合に昇給する仕組みや、勤続年数が増えることで昇給する仕組みです。

また、実技試験や人事評価に基づいて定期的に昇給を判定することが求められます。これらの仕組みは、就業規則や内規で明文化し、全ての介護職員に周知する必要があり、10人未満の事業所では内規で対応可能です。


キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額)

キャリアパス要件Ⅳは経験、技能のある介護職員のうち1人以上は賃金改善後の賃金額が年額440万円以上である必要があります。処遇改善加算Ⅰ、Ⅱの場合に必要となる要件です。

経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金の見込額(新加算等を算定し実施される賃金改善の見込額を含む。)が年額440万円以上であること(新加算等による賃金改善以前の賃金が年額440万円以上である者を除く。)。

ただし、以下の場合など、例外的に当該賃金改善が困難な場合であって、合理的な説明がある場合はこの限りではない。

  • 小規模事業所等で加算額全体が少額である場合
  • 職員全体の賃金水準が低い事業所などで、直ちに一人の賃金を引き上げることが困難な場合

さらに、令和6年度中は、賃金改善後の賃金の見込額が年額 440 万円以上の職員の代わりに、新加算の加算額のうち旧特定加算に相当する部分による賃金改善額が月額平均8万円(賃金改善実施期間における平均とする。)以上の職員を置くことにより、上記の要件を満たすこととしても差し支えない。

引用:厚労省|介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について
参考:厚労省|一本化リーフレット


キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)

キャリアパス要件Ⅴは処遇改善加算Ⅰの算定にのみ必要となる要件で、サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置する必要があります。具体的にはサービス提供体制加算や特定事業所加算などサービス類型ごとに定められている加算を算定している必要があります。

以下にサービス類型ごとに必要となる加算をまとめています。

引用元:厚労省|キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置要件)を担保するものとして算定が必要な加算の種類及び加算区分

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月額賃金改善要件

処遇改善加算の月額賃金改善要件とは、介護職員の基本給などの月額賃金を引き上げることを目的とした要件です。要件は2つに分けられており、旧ベースアップ等支援加算の算定状況によって対象の要件が異なってきます。

月額賃金改善要件は、処遇改善加算の全ての区分で満たす必要のある要件です。

月額賃金改善要件Ⅰ(月給による賃金改善)

処遇改善加算Ⅳ相当の加算額の2/1以上を、月給(基本給又は決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる必要があり、処遇改善加算Ⅰ~Ⅲを算定する場合でも、仮に処遇改善加算Ⅴを算定した場合に見込まれる加算額の2/1以上を基本給等に充てることとされています。

新加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給又は決まって毎月支払われる手当(以下「基本給等」という。)の改善に充てること。

また、事業所等が新加算ⅠからⅢまでのいずれかを算定する場合にあっては、仮に新加算Ⅳを算定する場合に見込まれる加算額の2分の1以上を基本給等の改善に充てること。

なお、加算を未算定の事業所が新規に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定し始める場合を除き、本要件を満たすために、賃金総額を新たに増加させる必要はない。

したがって、基本給等以外の手当又は一時金により行っている賃金改善の一部を減額し、その分を基本給等に付け替えることで、本要件を満たすこととして差し支えない。

また、既に本要件を満たしている事業所等においては、新規の取組を行う必要はない。ただし、この要件を満たすために、新規の基本給等の引上げを行う場合、当該基本給等の引上げはベースアップ(賃金表の改訂により基本給等の水準を一律に引き上げること)により行うことを基本とする。

月額賃金改善要件Ⅰについては、令和6年度中は適用を猶予する。その ため、令和6年度の新加算の算定に当たり、本要件を満たす必要はない が、令和7年度以降の新加算の算定に向け、計画的に準備を行う観点か ら、令和6年度の処遇改善計画書においても任意の記載項目として月額 での賃金改善額の記載を求めることとする。

引用:厚労省|介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

サービス別処遇改善加算Ⅴの加算率は以下の通りです。

サービス区分処遇改善加算Ⅳ
訪問介護夜間対応型訪問介護定期巡回・随時対応型訪問介護看護14.5%
(介護予防)訪問入浴介護6.3%
通所介護地域密着型通所介護6.4%
(介護予防)通所リハビリテーション5.3%
(介護予防)特定施設入居者生活介護地域密着型特定施設入居者生活介護8.8%
(介護予防)認知症対応型通所介護12.2%
介護福祉施設サービス地域密着型介護老人福祉施設(介護予防)短期入所生活介護10.6%
介護保険施設サービス(介護予防)短期入所療養介護(老健)4.4%
(介護予防)短期入所療養介護(病院等(老健以外))介護医療院サービス(介護予防)短期入所療養介護(医療院)2.9%

月額賃金改善要件Ⅱ(旧ベースアップ等加算相当の賃金改善)

旧ベースアップ等支援加算を算定していない事業所が、令和8年3月31日までの間において、新たに処遇改善加算Ⅰ~4までのいずれかを算定する場合は月額賃金改善要件Ⅱの算定要件を満たす必要があります。

令和6年5月31日時点で現に旧処遇改善加算を算定しており、かつ、旧ベースアップ等加算を算定していない事業所が、令和8年3月31日ま での間において、新規に新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合には、初めて新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定し、旧ベースアップ等加算相当の加算額が新たに増加する事業年度において、当該事業所が仮に旧ベースアップ等加算を算定する場合に見込まれる加算額の3分の2以上の基本給等の引上げを新規に実施しなければならない。その際、当該基本給等の引上げは、ベースアップにより行うことを基本とする。

また、令和6年5月以前に旧3加算を算定していなかった事業所及び令和6年6月以降に開設された事業所が、新加算ⅠからⅣまでのいずれかを新規に算定する場合には、月額賃金改善要件Ⅱの適用を受けない。

本要件の適用を受ける事業所は、初めて新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定した年度の実績報告書において、当該賃金改善の実施について報告しなければならない。したがって、例えば、令和6年5月31日時点 で現に旧処遇改善加算を算定しており、かつ、旧ベースアップ等加算を算定していない事業所であって、令和6年6月から新加算Ⅰを算定した事業所は、令和6年6月から旧ベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の基本給等の引上げを新規に実施し、令和6年度の実績報告書で 報告しなければならない。 

また、同様の事業所が、令和6年6月から新加算Ⅴ1(旧ベースアップ 加算相当の加算率を含まない)を算定し、令和7年4月から新加算Ⅰを算定する場合は、令和7年4月から旧ベースアップ等加算相当の加算額の3分の2以上の基本給等の引上げを新規に実施し、令和7年度の実績報告書で報告しなければならない。

なお、実績報告書においては、事業者等の事務負担を軽減する観点か ら、月額賃金改善要件Ⅱの判定に用いる旧ベースアップ等加算に相当する加算額は、新加算ⅠからⅣまでのそれぞれの加算額に、別紙1表3に掲 げる新加算ⅠからⅣまでの加算率と旧ベースアップ等加算の加算率の比(小数第4位以下を切捨て)を乗じて算出した額とする。

引用:厚労省|介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

職場環境等要件

処遇改善加算の職場環境要件は、入植促進に向けた取組や、介護職員のキャリアアップ、ICTの活用による生産性向上などの取組を促進させる要件で、算定する処遇改善加算の区分によって、取り組みが必要となる数が変わります。

処遇改善加算Ⅰ・Ⅱ:区分ごとにそれぞれ2つ移行(生産性向上は3つ以上、うち⑰または⑱は必須)
処遇改善加算Ⅲ・Ⅳ:区分ごとにそれぞれ1つ以上(生産性向上は2つ以上)

区分内容
入職促進に向けた取り組み① 法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化
② 事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
③ 他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築(採用の実績でも可)
④ 職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施
資質の向上やキャリアアップに向けた支援⑤ 働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対するユニットリーダー研修、ファーストステップ研修、喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
⑥ 研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
⑦ エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入
⑧ 上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ・働き方等に関する定期的な相談の機会の確保
両立支援・多様な働き方の推進⑨ 子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備
⑩ 職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
⑪ 有給休暇を取得しやすい雰囲気・意識作りのため、具体的な取得目標(例えば、1週間以上の休暇を年に●回取得、付与日数のうち●%以上を取得)を定めた上で、取得状況を定期的に確認し、身近な上司等からの積極的な声かけを行っている
⑫ 有給休暇の取得促進のため、情報共有や複数担当制等により、業務の属人化の解消、業務配分の偏りの解消を行っている
腰痛を含む心身の健康管理⑬ 業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実
⑭ 短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
⑮ 介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、職員に対する腰痛対策の研修、管理者に対する雇用管理改善の研修等の実施
⑯ 事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備
生産性向上(業務改善及び働く環境改善)のための取組⑰ 厚生労働省が示している「生産性向上ガイドライン」に基づき、業務改善活動の体制構築(委員会やプロジェクトチームの立ち上げ、外部の研修会の活用等)を行っている
⑱ 現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している
⑲ 5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備を行っている
⑳ 業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減を行っている
㉑ 介護ソフト(記録、情報共有、請求業務転記が不要なもの)、情報端末(タブレット端末、スマートフォン端末等)の導入
㉒ 介護ロボット(見守り支援、移乗支援、移動支援、排泄支援、入浴支援、介護業務支援等)又はインカム等の職員間の連絡調整の迅速化に資するICT機器(ビジネスチャットツール含む)の導入
㉓ 業務内容の明確化と役割分担を行い、介護職員がケアに集中できる環境を整備。特に、間接業務(食事等の準備や片付け、清掃、ベッドメイク、ゴミ捨て等)がある場合は、いわゆる介護助手等の活用や外注等で担うなど、役割の見直しやシフトの組み換え等を行う。
㉔ 各種委員会の共同設置、各種指針・計画の共同策定、物品の共同購入等の事務処理部門の集約、共同で行うICTインフラの整備、人事管理システムや福利厚生システム等の共通化等、協働化を通じた職場環境の改善に向けた取組の実施
やりがい・働きがいの醸成㉕ ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
㉖ 地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
㉗ 利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供
㉘ ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供

参考:厚労省|職場環境等要件

処遇改善加算の計算方法

処遇改善加算は区分ごとに加算率が決まっており、その月の処遇改善加算を除く総単位数に、加算率を掛けることで処遇改善加算の単位数を算出します。また、その際に出た小数点以下については四捨五入となります。

例)訪問介護 処遇改善加算Ⅰ(24.5%)を算定している場合
1000単位(ひと月の総単位数) × 24.5%(処遇改善加算の加算率) = 245単位


処遇改善加算の金額を計算する際は、算出した単位数に単位数単価を掛けることで求めることができ、小数点以下は切り捨てとなります。

例)処遇改善加算245単位、単位数単価10.70の場合
245単位(処遇改善加算の単位数) × 10.70(単位数単価) = 2,621.5
小数点以下は切り捨てなので、2,621円となります。

処遇改善加算の配分ルール

基本的に処遇改善加算で得た金額は、年度中に介護職員等の処遇改善に使用する必要がありましたが、2024年の介護報酬改定では、令和6年度に+2.5%、令和7年度に+2.0%のベースアップを実現するために、令和6年度と、令和7年度の2年間を通して全額が賃金改善に充てられることとされています。

つまり、令和6年度分を令和7年度として繰越すことや、令和7年度分を令和6年度分として前倒しすることができます。

引用元:労省|一本化リーフレット

処遇改善加算の必要書類

処遇改善加算を算定する場合は、それぞれの期日までにいくつかの書類を提出する必要があります。加算算定のためには必ず必要となるため、各書類の内容を十分に理解し作成をしましょう。

以下で各書類の概要と、記入例を合わせて解説します。

処遇改善計画書

処遇改善計画書には賃金改善計画や、各算定要件をどの程度満たしているのかを記載します。

掲載元:厚労省|介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式

介護給付費算定に係る体制等状況一覧表等の届出

新たに処遇改善加算を算定したり、処遇改善加算の区分を変更する際に必要となる書類です。具体的には「介護給付費算定に係る体制等に関する届出書」「介護給付費算定に係る体制等状況一覧表」の提出が必要となります。

  • 提出期限
    居宅系サービス:算定を開始する前月15日
    施設系サービス:算定を開始する当月1日
  • 提出先
    指定権者
  • 様式
    各市町村の様式

実績報告書

処遇改善加算の実績報告書は、加算算定後に提出する書類です。処遇計画書に記載した賃金改善や、算定要件の状況を記載します。

掲載元:厚労省|介護職員の処遇改善:加算の申請方法・申請様式

処遇改善加算算定までの流れ

  1. 処遇改善計画書・体制届の提出
  2. 処遇改善加算の請求
  3. 処遇改善加算の支払い
  4. 実績報告書の提出

処遇改善加算のFAQ

処遇改善加算の算定や必要書類に関してのFAQ(よくある質問)が厚労省によってまとめられています。

これらの回答を参考に正しく処遇改善加算を算定しましょう。

引用:厚労省|介護職員等処遇改善加算等に関するQ&A(第3版) 

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